KADODE

【実践Tips】Claudeで月次の損益集計を最大8割削減!バラバラな販売データを「商品単位の利益」に変える実践手順 

複数の販売チャネルを展開しているとデータが分散し、月次の損益計算でCSVを手作業で突き合わせる負担や、商品別の横断利益が見えない課題が発生しがちです。

この課題は、販売データをBigQueryに集約して損益ロジックを標準化し、Claude(AIエージェント)を直接接続することで解決できます。今回は、KADODEが実際に構築した構成をもとに具体手順を解説します。

なぜ「ダッシュボードを作る」から始めると失敗するのか?

販売データの可視化に取り組む際、BIツールで画面(ダッシュボード)を作ることから着手しがちです。しかし、定義を揃えずに画面だけを作ると、「表示されている利益は、何の費用を差し引いた後の数字なのか」を誰も説明できなくなります。 結果として、ダッシュボード運用が始まった途端に「数字の正しさを検証する会議」が増加し、可視化したにもかかわらず意思決定のスピードが落ちてしまうという本末転倒が起こります。

着手すべきは画面ではなく、「何をもって利益とするか」の1点です。売上から何を引くのか、利益率の分母は何か、キャンセルとクーポンはどう扱うのか。ここを1つに決めたうえで、①集める → ②定義をそろえる → ③AIから引ける状態にする → ④画面に出す、の順に積んでいきます。画面は最後です。

この順番で組むと、効果は工数よりも先に会議の場に出ます。「同じ名前の数字が会議ごとに食い違う」状況が消え、数字を突き合わせていた時間がそのまま議論の時間に変わる。集計工数の削減は、その後からついてきます。

構築の具体的手順(4ステップ)

構築の具体的手順(4ステップ)

事前準備
・クラウドデータウェアハウス(BigQuery)を用意する
・各チャネル(ECモール・自社EC・卸売)から日次でデータを取り出す経路を確認する
・3つのマスタを整備する:商品マスタ/チャネル別の商品コード対応表/セット商品の構成品マスタ
・「利益の定義」を関係者で合意しておく(ステップ②で使います)
※マスタの整備が、この取り組みでいちばん時間のかかる工程です。

ステップ①:データを1か所に集めて、3層に分ける

各チャネルのデータをDWH(BigQuery)に日次集約し、生データ・マスタ・集計ビューの3層構造で管理します。商品コード対応表により名寄せを自動化します。

🔴 効果:「この商品が全社で何個売れて、在庫がいくつ減ったのか」を出すためのCSVダウンロードと突合作業が、そのままなくなります。

ステップ②:損益ロジックを1つに標準化する

売上(クーポン控除後・キャンセル除外)から、原価・決済手数料・物流費・固定費を差し引いた貢献利益ベースで、損益の計算方法を全チャネル共通に定義します。利益率の分母もそろえます。

🔴 効果:チャネル横断の商品別利益が、Excelを開かずに、いつでも同じ定義で出るようになります。

ステップ③:AIをデータベースに直接つなぐ

AIエージェント(Claude)をMCP経由でデータベース(BigQuery)に接続します。これにより、「先月のチャネル別営業利益は?」「この商品の定期購入継続率は?」と日本語で質問するだけで、AIが背景でSQLを自動生成・実行し、集計結果と分析の示唆までを即座に提示してくれます。
ここでのポイントは、前提を先に読み込ませておくこと。具体的には次の4つです。
・税の扱い(税抜/税込のどちらで答えるか)
・利益の定義(ステップ②で決めたもの)
・比較の基準(前月比か前年同月比か、営業日ベースか)
・分析に使える期間(後述)
この前提がないと、同じ質問でも聞いた人ごとに違う数字が返ってきます。逆にここを固めておけば、誰が質問しても同じ定義の数字が返る状態になります。

🔴 効果:SQLを書けない担当者でも自分で数字を引けるため、「依頼して待つ」数日が、会議中の数分に置き換わります。

〈誰でも自然言語ベースでFactから集計・示唆を抽出〉

ステップ④:経営が日常的に見る画面まで用意する

月次のチャネル別サマリ、商品単位の損益、在庫の現在値、入金予定を1画面に集約したダッシュボードをクラウド上(Cloud Run)に構築し、URLとID・パスワードだけで閲覧できる形にします。閲覧のたびに権限申請や環境構築が必要な状態だと、結局は「詳しい人がスクリーンショットを配る」運用に戻ってしまいます。
あわせて、顧客IDはハッシュ化、商品名・取引先名はマスクした状態でも分析できる設計にし、同一構成のダミーデータ環境も別に用意します。実データを開かずに社内説明ができる状態を最初から作っておくと、展開が一気に楽になります。

🔴 効果:見るための手続きがなくなり、社内展開がURLの共有だけで完了します。

〈ダッシュボード画面イメージ〉

実践時における「データの確からしさ」の注意点

AIをデータベースにつなぐ作業自体は、実はすぐ終わります。工程の大半を占めたのは、その手前にあるデータと定義の整備でした。AIの回答は、読み込ませたデータと前提の写しでしかありません。先に固めておきたいのは、次の4点です。

1. 利益の定義を先に決める:売上から何を引くか、分母は何か。あとから変えると、過去の数字もすべて変わります。

2. マスタの更新ルールを明文化する:商品・チャネル・取引先が増えたとき、誰が・いつ・何を更新するか。

3. 数字の確度にフラグを持たせる:原価に「確定/暫定/概算」の区分を持たせ、推定値がそのまま断定に使われない状態にする。

4. 分析対象外の期間を明記する:費用の按分が未入力で利益が正しく算出されない期間は、仕様に「対象外」と書いておく。

「わからないこと」を先に定義してAIにも前提として読み込ませておくと、答えられない問いには「この期間は判断できません」と返ってくる。データの限界そのものを書き残しておくのが、推測で埋めた数字が意思決定に紛れ込むのを防ぐ、いちばん確実な方法でした。
つまり、AIの精度の問題に見えて、実際には定義の問題であることがほとんどです。しかもここで整理する4点は、AIを使うかどうかとは関係なく、本来決まっているべき情報でもあります。

<まとめ>数字を「作る仕事」から「使う仕事」へ

本構成により、月次損益集計の工数を最大8割削減し、数字の抽出時間を数日から数分へ短縮できます。

成功のポイントは「画面より先に利益の定義を決めること」「マスタで構造的に解くこと」「データの限界を仕様化すること」の3点です。集計に追われる時間を判断に使う時間へ変えるために、まずは自社の利益計算式の整理から始めることを推奨します。